Bonjour 皆さん!
フランスに到着し、プロヴァンスのコンドミニアムで一夜を過ごしました。到着後初めての夜は時差ボケでなかなか眠れないものですが、今回の渡仏は前投稿「長い旅程完了 – フランスに安く行く方法」でお伝えした通りの超長旅。その疲れと睡眠不足のおかげでぐっすり眠ることができました。
時差ボケ解消法はいろいろありますが、飛行機の中でできるだけ寝るのを我慢し、睡眠不足の状態で現地の夜を迎えるのが最も効果的です。眠さで一時的にきつくはなりますが、後々とても楽になりますのよ。もちろん帰国時も効果絶大!
一晩の睡眠で身体も楽になりましたし、貴重な時間を無駄にすることはできません。さっさとアンティーク買い付けの肩慣らしに出かけましょう。まずはお気に入りの町リル・シュル・ラ・ソルグ(L’Isle sur la Sorgue)へ。
前回のフランス買い付けでご紹介させていただいた町です。この撮影場所から見る町はまさに町名の通り「ソルグ川の上にある島」。アンティークで有名な町でもありますが、何度かお話したように一般客向けの価格設定になっているため、なかなか買い付けには使いづらいのが残念なところ。
各地で開かれるアンティークフェアーや蚤の市は開催日が限定されますが、この町では多くのアンティーク・ブロカントショップがいつでも開いています。フランス到着後、都合の良い日程で本場のアンティークに接して目を慣らしておくのに最適な場所です。
知人が経営しているアンティークショップも何軒かありますので、フランス到着時には必ず挨拶がてら顔を出すようにしています。日本のお土産を渡すなどフレンドリーな関係を作る努力をしておくと、秘蔵の品を譲ってくれたり、蚤の市やフェアーで大幅に値引きしてくれるなど、「えこひいき」してもらえることがままあるのです。
また、普段日本で生活している人間にとっては、雑談などで買い付けに役立つ現地情報を入手できるだけでも大変ありがたいのです。ローカルな人だけが知っている激安蚤の市(ドロボウ市?)に関する情報は大変有用でした。
基本的に現地ディーラーにとって外国人バイヤーは「カモ」以外の何物でもありません。努力を積み重ね「オトモダチ」になり、マイナスな関係性を崩してしまいましょう。常に一定量を買い付け、お得意さんになることも大切です。
さて、本題に戻りましょう。アンティーク買い付けにおいて、本番前の肩慣らしは大切な準備活動です。
当店のフランス買い付けの頻度は年2回程度。渡仏の間隔は数か月、タイミングによっては1年近くになることもあります。なかなかうまく表現できないのですが、買い付けには独特の感性が必要で、その感性は買い付けをすることによって養われます。
時間がたつとその感性が鈍ってしまうのです。
買い付けに必要な感性が戻っていない状態でいきなり大舞台に上ってしまうと、不適切なものを仕入れてしまったり、そもそも「買う」という行為そのものが出来なくなったりします。
限られた品しか目にすることのできない日本での生活、つまりブランクが長い場合に感性が鈍ってしまうのはご理解いただけると思います。しかし「買うことができない」ということについては「え?アンティークやブロカントがたくさんあるのに買えない?なぜ?」と疑問に思われる方が多いのではないでしょうか。
不思議なことに、渡仏後はじめての買い付けでは、なかなか最初の一歩が踏み出せないものなのです。
買い付けの感性が鈍ってしまっているということにもつながっているのですが、「本当にこの品でいいの?時代が新しくない?日本で受け入れられるだろうか?貴重なフランス買い付けで無駄なものを買ってしまったらどうしよう」などといった後ろ向きな考えばかりが頭の中を駆け巡ります。
アンティークバイヤーの間で「ファーストステップ・バリヤー」と呼ばれるものです。このような状況に陥ると、年に数回しかない貴重な買い付け中に無為な時間だけが過ぎていき、「どうしよう、どうしよう」と焦りが募るばかりです。
このバリヤーを取り払う一つの方法が肩慣らし。「買わない」という前提でいくつかのアンティークショップやブロカントショップを巡ります。緊張感が少ない状況でフランスの空気に身体を順応させるのです。
久しぶりの本場アンティークやフランス・フランス人に対する心理的抵抗感のようなものがバリヤーを作る大きな要因の一つです。その抵抗感を減らすことのできるショップ巡りは効果的な対処方法といえるでしょう。私は半分フランス人ですが、それでも必ずこのような準備活動を行っています。
知り合いのある大物日本人ディーラーの買い付けは、いつもフランス滞在4日~5日程度のタイトなスケジュール。コンテナ一杯でないにせよ短期間である程度のボリュームを買い付けなければならないそのディーラーでさえも、到着後いきなり蚤の市やアンティークフェアーに臨むことはありません。まずは馴染みのショップを訪れ、店主と雑談し、商品を眺め、フランスや本場アンティークにどっぷり浸るのを常としています。
どうしても肩慣らしの時間を捻出できない場合の対処法は、捨てる覚悟で迷わず何かを買ってしまうこと。目をつぶって選んでも良いくらいです。不思議なもので、一品でも買うとバリヤーがかなり弱くなるのです。もちろん上限金額は決めておいてくださいね。
これまでとは真逆な話になりますが、フランスや本場アンティークへの慣れすぎも厳禁。滞在が長いと後半は感性がフランス人化し、日本の方にはなかなか受け入れてもらえないような品にもつい手が出てしまうのです。特に半分フランス人の私は、時間がたてばたつほどピュアなフランス人マインドになりがち。日本のニーズに合致しない品への仕入れ要求を抑えようとはするのですが、素晴らしいと感じた品はどうしても買い付けたくなります。
ビジネス度外視で本場フランスでも認められているアンティークを日本の皆様にご紹介するという設立趣旨を考えると、当店の場合はそれでいいのかもしれませんね。
ただし、純粋にビジネスを目的とした日本のショップの方は滞在期間にご注意ください。長ければよい、というものでもありません。日本人クライアントの嗜好を常に頭に置き、ばりばりジャパニーズな目で選ぶということがアンティーク買い付けの王道かと思います。ジャパニーズな目を失わない自信があれば、もちろん長い滞在でもOK!
本日は町内10店舗以上に顔を出し、フランスとフランスアンティークに馴染む目的を果たすことができました。(直近3枚の写真はみな本日訪れたリル・シュル・ラ・ソルグ町内のアンティーク・ブロカントショップです)
町内を回ったのち、町から少し離れたショップを二つ訪問。少し離れた、といっても軽井沢から東御くらいの距離はあります。地元の方しかわかりませんね、すみません。
まずはシーズン3の「フランス買い付け完了しました」でご紹介したアンティークファブリック店。今では買い付けの都度訪れるお馴染みショップになっています。今回は買い付けの何週間か前に連絡を入れて、興味のあるジャンル・テイストの商品を探しておいていただきました。
売り手に興味のあるものを伝えるという行為は、実は諸刃の剣です。定価や希望小売価格のようなものがないアンティーク・ブロカント品は売り手の裁量一つで価格が何倍にも何分の一にもなるからです。
「かなり欲しそうだから高くても買いそうだ。ふっかけてやれ」というスタンスで臨まれる可能性が非常に高いです。よほど信頼関係が無い限り、通常はできるだけ手の内を明かさないようにしましょう。
専門店はいいですね、品ぞろえが優れているだけでなく、長年の経験に裏打ちされたプロフェッショナルな知識を吸収することもできます。
取り置き商品からいくつか気に入ったものを選び、その後しばらく店内を物色。このショップには古いオペラの衣装などもあって目を楽しませてくれます。
さすがにエネルギーが尽きてきて、この後もう一店訪れるのが精いっぱいでした。こちらも何度かご紹介したお馴染みのdépôt-vente系ショップ。
本日は心に響く商品を一つも見つけることができませんでした。数日前にオーストラリア人のバイヤー集団が荒らしていったそうです。商品の入れ替えが早い店なので、数日後に再チャレンジしてみます。
最後にオマケ。リル・シュル・ラ・ソルグ町内のとあるインテリアショップで見かけた立像です。
犬?狼?ミイラ?
後ろの大きな銀色のドクロも不気味ですね。でもこういうセンス、かなり好きです。
明日は4時起きで蚤の市に。
それではまた近いうちにお会いしましょう、à bientôt !
Raphaël