Bonjour 皆さん!
前回の投稿「プロ向けアンティークフェアーってどんなもの?」では、フランスで開催されるプロ向けアンティークフェアーがどのように運営されているかをご紹介しました。事前にご一読いただければ、本投稿の理解も深まるかと思います。
余談ですが、2023年11月よりアンティークジュエリーのオンラインショップ「メゾンマエアス」を開設いたしました。ご興味のある方はぜひお立ち寄りください。
それではフェアー当日の朝から時系列に沿ってご説明しましょう。まずはパーキングです。バン(車)を買い付け品搬出口(以後、出入口と書きます)のできるだけ近くに停めることが非常に重要なポイントになります。当日の買い付け量が変わってしまうほど、駐車ポジションが買い付け効率与える影響は大きいのです。
出展者から購入した商品は自分でバンまで運ばなければなりません。ファブリックや小さな雑貨などを専門に買い付ける方を除き、当日買い付けたアンティーク・ブロカントを一気にバンまで運ぶのは現実的ではありません。間違いなくバンまで何往復もすることになります。
運搬時間を最小化するため、できる限り出入口近くの場所にバンを停める必要があるのです。商品にダメージを与えないように細心の注意を払って運搬しなければなりませんので、ピックアップする場所や駐車場の位置によっては運搬時間が片道20分くらいになることもあります。
ちなみに、まれに人間が出入りするゲートと家具など大きな品の搬出口が異なる会場もあります。事前に商品搬出場所をチェックしておくと安心です。
多くの会場では駐車場が出入口に隣接していますが、徒歩数分の離れた場所ということも。その場合、バンは出入口近くに路駐することになります。
どのようなケースにでも対応できるよう、開催日前に会場案内やGoogle Mapなどで駐車場の位置を把握しておいてください。フェアーの運営母体がしっかりしていれば、HPや事前の案内メールなどに駐車場事情が記載されています。
会場そのもの(ほとんどの場合展示会用コンベンション施設)のHPでも駐車場の情報を取得することできます。ただし、フェアーによっては本来の使い方と異なるイレギュラーな配置となっているケースもありますので、できるだけアンティークフェアーの運営母体や関連するSNSなどの情報を参考にすることをお勧めします。
駐車場の場所や路駐位置を押さえたら、事前にカーナビに登録しておきます。使い慣れていないカーナビでは、出発直前の短い時間内に行き先設定ができない可能性もあるからです。緯度経度が最も確実ですので、GoogleMapなどで緯度経度を調べておきましょう。
どの会場も駐車場は広大です。効率的に買い付けをするために、可能な限り出入口に近い場所をゲットする必要があります。車一台分でも運搬効率がかなり変わります。出入口に近い場所から埋まっていきますので、とにかく早い時間に到着すること。フェアーの開始時刻はAM8時ですが、遅くとも2時間前、つまりAM6時には到着し、ベストポジションを確保しましょう。
路駐がメインとなる会場でも、出入口に近い駐車位置をゲットしなければいけません。駐車場内に停める場合と同じようにできるだけ早い時間の到着を心がけましょう。
基本的に駐車場は無料で利用できます。まれに出入口に隣接する一部エリアを有料としているケースもありますが、このエリアはあっという間に満車となります。有料エリアを利用する場合はさらに早く到着しなければなりませんのでご注意ください。
さて、ようやく駐車の件が終了しました、長かったですね!でもそれだけ大事なことですので長文ご容赦ください。
それでは車を降りて会場に向かいましょう。
前投稿でお伝えした通り、プロ向けアンティークフェアーではプロフェッショナルだけが入場を許可されています。入場時のチェック方法は開催地によってまちまちです。プロであることの証明書を必ず提示しなければならなかったり、入り口に立っている何人かのガードマンがアットランダムに証明書の提示を求めたり、まったく見せる必要がなかったり。
そもそもプロであることの証明書とは何でしょうか?多くの開催地でオフィシャルに求めているものは、商登記簿抄本、SIRET番号(フランスで法人などの事業所単位に割り振られている番号)、その他専門分野の記載された各種証明書など、準備するのが面倒そうなものばかりです。
外国人はどうすればいいのか?実は名刺を見せるだけで通してもらえます。
アンティークやアート関連の事業を営んでいることが判る内容がアルファベットで記載されているものがベストですが、アンティークやブロカントを連想させるデザインのロゴや背景を使っているというだけでも大丈夫でしょう。該当するものをお持ちでない場合は”Antique”、”Brocante”や”Art”などとアルファベット表記されているものを用意してください。お役所は別として、一般のフランス人はあまりカタいことは言いません。
この程度のゆるいチェックですので、少し小細工すればプロでない方が入場することも可能です。しかし、入場したとしても出展者(売り手)は一般人には売ってくれません。一般の方が簡単にプロ向けの卸値でアンティーク・ブロカントを入手できてしまうと、卸市場で大量販売する彼らのビジネスモデルが成り立たなくなってしまうからです。
百戦錬磨の出展者の目は肥えています。買い手がプロなのか一般人なのか、簡単に見抜いてしまいます。「あなた素人なんじゃない?売らないよ」とはなかなか言いづらいので、一般人と見るやとてつもない高値をふっかけ、購入をブロック。
私もその現場に遭遇したことがあります。若い学生風のお兄さんにあり得ないような高値を提示していた出展者が居たので、「あの品そんなに高いの?どんだけ?」と尋ねたところ、「彼はparticulier(個人、一般人、素人)だから売らないよ」と返答がありました。
立ち振る舞い、着ている服、話す内容、商品に対する知識、交渉のしかた、いろいろな部分で一般人感が出てしまいます。私も業界に入ってしばらくの期間はプロらしくふるまうよう気を使いました。現在は自然体で何の問題もありません。おかげさまでどこに行ってもプロフェッショナルであると認めてもらえます。場違いなスーツ姿で行っても大丈夫だと思います、着て行かないですけどね。
ほとんどの開催地ではバイヤーから入場料を徴収しません。運営経費(&利潤)は出展者が支払う出展料でまかなわれています。ショバ代というやつですね。
次の画像は某開催地の出展料です。
“Emplacements couverts”は屋内ということ。ここでは、屋外出展料が屋内出展料の三分の一程度です(㎡単位)。
バイヤーから20ユーロ程度の入場料を徴収する開催地もあります。バイヤーから収益を得られる分、出展料が安くなります。次の画像はバイヤーから入場料を徴収する開催地の資料。出展料は他の3分の2くらいになります。
この開催地でも他と同様、屋外出展料が安く、屋内出展料の半額に設定されています。
ここまで細かく出展料の説明をしているのは、屋内と屋外で販売されている商品に違いがあることを知っておいていただくためです。
ご覧いただいた通り、どの開催地でも屋外の出展料は屋内に比べて低く設定されていますので、利潤低めのブロカントな商品を扱うディーラーは主に屋外に出展します。ブロカントな品を買い付ける方は屋外を、アンティーク系を買い付ける方は屋内を中心に回ってください。
さて、プロフェッショナルチェックや一部会場での入場料支払いを済ませ、無事に最初のゲートを通過することができました。実はまだこの先に次のゲートが待ち構えています。開場時間のAM8時きっかりに開かれるメインゲートです。
検問所(最初のゲート)と正門(メインゲート)の間にある緩衝地帯のようなエリアには必ずコーヒースタンドがあります。品数は少なめですが、エスプレッソ・紅茶などのホットドリンクとクロワッサンやパン・オ・ショコラなどのヴィエノワズリーを購入することができますので、ぜひお試しください。
スタンドだからとなめてかかってはいけません。その朝の焼きたてをブランジュリーから仕入れていますので、ヴィエノワズリーはどこも超が付く美味しさですよ!
私は開場時間の1時間くらい前にこの緩衝地帯に入ります。必ず知り合いのディーラーに出くわしますので、世間話をしながら情報収集をするのにもってこいの場所。真冬の場合は寒いのでギリギリまでバンの中で暖をとっていますけどね、健康第一ということで(汗)
空も明るくなってきました。そろそろ開場時間です。ディーラーたちはみなメインゲート前に集まり、今か今かと開門を待っています。開門すると嬌声を上げたり指笛を吹きながらなだれ込むように怒涛の入場!
あとはひたすら買い付けるだけです。先ほどお伝えしたように、屋外はブロカント中心、屋内はアンティーク中心となっています。初めて訪れる開催地の場合、まずはブロカントかアンティークかを目安に探訪エリアを決めてください。
何度かそのフェアーを経験するうちに、どのあたりにどのようなものが売られているのか把握できるようになります。もちろん開催回ごとに多少の変動はありますが、おおよその傾向は変わりません。
必ずしもフランス語を話せなくても買い付けはできます。カタコトの英語だけでもOK。そんなバイヤーはいくらでも居ます。フランスアンティークを目指して世界中から集まっていますからね。
極端なことを言えば、いくら?と販売希望額を聞き出し、それに対するこちらの要望を伝え、イエスorノーの回答が判れば充分。まとまらなければ金額を変えて繰り返すだけです。
驚くことにフランス語を全く話せない出展者もいます。特にスペインから売りに来ている出展者の多くは全くフランス語や英語を話さず、提示する金額もスペイン語。こちらがそれを全く理解できなくても指など使いながら簡単な交渉くらいはできるものです。
開場後2時間くらいはひたすら買い付けることに専念しましょう。好みは違えど良い品は人気が集中しますので、先手必勝、早い者勝ちの世界です。とにかくお目当ての品を見つけるのが先決。
この時間帯は、よほどぼったくりと感じない限り、多少高いなと思っても買い付けてしまうことをお勧めします。買った後悔よりも買わなかった後悔の方がはるかに大きいものです。路面店であれば思い直して後日引き返すということもできますが、フェアーの場合、その場で購入する以外にその商品を手に入れる方法はありません。
ちなみに買い付け品を都度バンに運ぶ必要はありません。支払いだけ済ませて、まず商品をどんどん確保していきましょう。暗黙の了解で、ピックアップまで買い付けた品を出展者がその場所にキープしておいてくれます。
領収書は通関にも必要な重要資料ですので、支払いのタイミングでもらっておくのがベスト。とはいえ、早い時間帯は出展者も忙しいため、領収書作成を後にしてくれと頼まれるケースも多くあります。以後何等かのご縁があるかもしれませんので、先方の要望を尊重しましょう。
次の画像のような領収書を準備し、出展者に渡して必要な個所を埋めてもらってください。特に記入する箇所を説明をしなくても大丈夫です。
「合計だけ書いてもいい?」と聞かれた場合は、一つ一つ明細を書くようにお願いしてください(”Noter en détail, s’il vous plaît”ー「ノテ オン デタイユ シルブプレ」)。領収書に明細が無い場合、通関用資料作成が難しくなります(できなくはないでが)。
出展者が用意している領収書を使うように要求されることもあります。先方の領収書に会社名(店名)、住所、電話番号を書きましょう。難しいことはありません。会社名や住所がアルファベットで記載されている店印なり社判のようなものを持っていると、忙しいときにいちいち先方の領収書に記入しなくて済むので便利です。
出展者が準備した領収書を使う場合、だいたい”Avez vous un tampon?”(スタンプ持ってますか?)と尋ねられます。私は2回目の買い付けから会社のアルファベット版スタンプを持っていきました。スタンプは名刺同様ネットなどで簡単に作ることができます。
11時頃になったらバンへの運搬・積み込みを開始しましょう。運搬用に必ず台車(chariot)を用意しておいてください。台車はカストラマ(Castorama)などのホームセンターで購入しても良いですし、ほとんどのレンタカー屋でオプション備品として借りることができます。
時間に限りがありますので、できるだけいくつかの品をまとめて運びましょう。道はデコボコしていますので、振動で傷つけないように要注意!
冬でも汗だくになるほどの重労働ですが、苦労の末に入手したものを持ち帰るのは嬉しいものです。
購入してもらえた嬉しさで満面の笑みをたたえる出展者と共に一枚。
おかげさまで倉庫は素敵なアンティーク・ブロカントで華やかになってきました。買い付け最終日まで一生懸命頑張ります!
まだまだ書きたいことはたくさんありますが、投稿がかなり長くなってしまいましたので今回はこれで終了とします。お伝えしきれなかったことはいずれ少しずつご紹介していきますので、楽しみにお待ちください。
プロ向けアンティークフェアーについては前投稿『プロ向けアンティークフェアーってどんなもの?』以外にも『アンティーク買い付け進行中です』や『ある日の買い付け』、『3連アンティークフェアーもあと1日』などでもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
それではまたお会いしましょう、à bientôt !
Raphaël