Bonjour 皆さん!
フランスワインがお好きな方であればシャトーヌフ・デュ・パプ(Châteauneuf-du-Pape)という名前を一度は聞いたり見たりされたことがあると思います。そう、ワインのAOCに認定されているアヴィニョン近くのコミューン(commune)です。
“Châteauneuf-du-Pape”の訳は「教皇の新しい城」。ちなみに教皇とは(ローマ)法王のことです。
教皇の座がローマからフランスのアヴィニョン(Avignon)に移されていた14世紀、教皇が夏の住まいとして現シャトーヌフ・デュ・パプの地を選んだという歴史から、この名前になりました。実はネーミングの経緯は非常に微妙なもので、必ずしも訳からイメージされるものではありません。
調べてみたところ、教皇が城を建てた14世紀当時の町の名前は”Châteauneuf- Calcernier“。”Châteauneuf-du-Pape”に改名されたのは、何百年も後の1893年です。
多くのウェブページやガイドブックなどに書かれている通り教皇が夏季滞在用の城を新しく建てたことから”Châteauneuf”(新しい城)という単語が使われたれたのだと信じて疑わなかったのですが、実はその前の13世紀から”Châteauneuf”が町の名前の一部であったことを知り、少しがっかり。ストーリー性は大事ですよね。
シャトーヌフ・デュ・パプと教皇の住居&仕事場(教皇庁)のあるアヴィニョン間の距離は10数km。車が無い時代だったとはいえ、これだけ近い場所にわざわざ別邸を持った理由がいま一つわかりません。GoogleMapによれば、徒歩でも3時間半の近場です。せっかく別邸を建てるのであれば、もう少し離れた雰囲気の違う場所を選ぶような?
シャトーヌフ・デュ・パプでは当時すでにワインが造られていました。公式な住まい&仕事場のある堅苦しいAvignonから少し離れて、ワインでどんちゃん騒ぎをするためにこの地に夏用の住いを持ったのではないかと邪推しております。
お城のパーティーで一晩に数キロリットルという信じがたい量のワインを消費していたという記録も残っていますので、まさに酒池の世界(汗)
前置きが長くなりました。
久しぶりにシャトーヌフ・デュ・パプに行ってきました。
アヴィニョン方面から町の中心部に向かうと、まず威風堂々たるお城が右手に見えます。私が初回そうだったように、多くの方がこのお城を見て「さすが教皇のお城!すごい!」と感嘆するのではないでしょうか。
※写真は過去に撮影したものです。
残念ながらこの建物は教皇のお城ではありません。その葡萄畑が周りに広がる”Domaine des Fines Roches”というワインのドメーヌを購入したHenri-Auguste Constantinという人物が19世紀後半に建てたお城です。
※現在このお城はHostellerie du Château des Fines Rochesという四つ星ホテルとして営業しています。
シャトーヌフ・デュ・パプの市街地は大きくなだらかな丘の上に広がっており、教皇のお城はその頂上に鎮座しています。まずはそのお城を見てみましょう。
小さめに見えるのは離れた場所から撮影しているため(&直前に巨大なお城を見ているため)。近寄ってみると「大きなお城」とは言えないまでも、近隣の邸宅に比べればはるかに大きく存在感のある建物です。
それでは町の頂上まで登って、教皇のお城の裏に回ってみましょう。
おっと、いきなりのスケルトンというか壁一枚!表からはそこそこしっかりしているように見えるのですが、実は完全な廃墟。
廃墟とはいえ、天井が教会などでよくみられるヴォールト様式だったことはかろうじてわかりますね。目の前に見える廃墟からキリスト教(というかカトリック教会)の重厚な歴史が感じられ、不思議と胸が熱くなります。そういえば自分も一応カトリック教徒でした。数十年単位でミサに参加していませんが。。。
お城まで登るとはるか遠くにローヌ川が見えます。シャトーヌフ・デュ・パプは17あるAOCコート・デュ・ローヌの下層AOCの一つです。
川が遠すぎますので、もう少しアップにしましょう。
これでもギリギリですね、すみません。
市街地の建物や醸造所などを除き、町から見える風景のほとんどが葡萄畑です。
シャトーヌフ・デュ・パプでは数多くの個性的なワインが創り出されています。個性派のワインが多い理由の一つは、やはり葡萄品種の多様性でしょう。AOCシャトーヌフ・デュ・パプとして使用して良い葡萄の品種がなんと13種類もあるのです(品種数でフランスのAOCトップ)。
ローヌ川から運ばれてきたこぶし大の石が混ざるギャレという土壌もシャトーヌフ・デュ・パプというAOCの特徴。
この石のおかげで水はけが良くなり、カビ、菌の繁殖や根腐れを防ぎます。また、石に日中蓄えられた太陽熱が夜間も土壌を保温し、旨味成分が凝縮された葡萄が結実すると言われています。
以前訪れた時にギャレの写真を撮影しましたので、ご紹介しておきましょう。
まるで荒れた土地のようですね!でもこの石がシャトーヌフワインの美味しさの秘訣。石が少ない、あるいは全く無い畑では、わざわざ石を運んできて畑に撒くこともこともあるようです。
私はボルドー派ということもあり、飲んだことのあるシャトーヌフのワインは10数本程度。少ないとはいえ、通常はそれだけ飲めば産地の特徴が見えてくるものです。
しかし、シャトーヌフ・デュ・パプだけはいまだに明確な特徴を発見できていません。他のローヌワイン同様、濃厚で凝縮された味わいではあるのですが、それ以外の共通する特徴が見えないのです。
各ドメーヌが13もある葡萄品種の中から独自の組み合わせを採用し独自の比率でブレンドしますので、共通する特徴というものがなかなか出てこないのでしょう。
あえて共通点を挙げるとすれば、「ちょっと変わってるな」と感じることくらいでしょうか。もちろんドメーヌ毎の個性、特徴はしっかりあります。
シャトーヌフ・デュ・パプの味わいが好き、というよりはシャトーヌフ・デュ・パプを飲むたびに新しい発見があるので楽しい!という方が多いのではないかと思います。
面白いAOCです。誤解の無いように付け加えれば、もちろん美味しいワインの多いAOCでもあります。
町の中を散策してみましょう。プロヴァンスらしい風光明媚な風景に目を奪われます。
フランスの町・村お決まりの教会も見えてきました。
市街地の中心に位置するこの教会は12世紀頃に建てられたもの。オリジナルの状態で現存しているのは建物のほんの一部で、この鐘の塔も含め多くの部分が14世紀と15世紀にリノベ・増築されたそうです。
それでも600年も前の建造物ですから、数十年で家を建て替える木の文化圏に住む身としてはその古さにただ圧倒されるばかり。
この町で最も目に付くのはやはりワイン系のショップ。いたるところにドメーヌ・シャトーの試飲・直売所やワインショップがあります。
事前予約が必要な直売所もありますので、ご注意ください。
シャトーヌフ・デュ・パプに限ったことではありませんが、多くのドメーヌが町中だけではなく、醸造所で試飲・販売を行っています。近くにドメーヌの葡萄畑が広がり、大きな樽がいくつも置かれている醸造所ではワイン産地ならではの雰囲気を味わうことができます。ワインがお好きな方はぜひ訪れてみてください。
せっかくなので今日のディナー用ワインを1本買って帰ることにしましょう。さて、どこで買おうかな。
90ものドメーヌから選ぶのは大変そう。
扉は超素敵ですが開いていないようです。
話しやすそうな年配の女性が一人で店番をしている向かって右の店に決定!
店番をしていたのはこのショップの店主で、予想通り人懐っこい方でした。フランス&スペインのハーフとのこと。今日のディナーで飲む一本を探していると伝えたところ、安く飲み頃の美味しい一本を選んでくれました。
小さく見にくいですが、陳列棚の上部に日本酒が飾ってあることに気づかれたでしょうか?日本人のお客さんも多く、リピーターの方がお土産として持ってきてくれたそうです。
「日本人以外に、中国人やロシア人、最近はチェコの人たちもお金持ちになってきたみたいでよく来るのよ」と各国の観光客事情を教えてくれました。
店主に選んでいただいた一本はこれ。そろそろ飲み頃に入るヴィンテージですね。
もちろんこの日の夕食で美味しくいただきました。
それではまた近いうちにお会いしましょう、à bientôt !
Raphaël