Bonjour 皆さん!
フランス買い付けの合間を縫ってプロヴァンス・リュベロン地方の村ボニュー(Bonnieux)に行ってきました。
リュベロン地方は風光明媚な町や村が点在する、プロヴァンス内陸部の山塊エリアです。リュベロン地方については「ルールマラン(Lourmarin)のご紹介」でざっくり説明していますので、よろしければご覧ください。
なお、本投稿では過去に撮った写真も数枚使用しています、ご了承ください。
どれくらいの方がボニューをご存知でしょうか?知名度で言えば、同じリュベロン地方のゴルド(Gordes)やルシヨン(Roussillon)に軍配が上がります。その印象的な遠景からプロヴァンスのモンサンミッシェルと(私に)言われるのゴルドや、オークル(黄土)採掘場近くにあり、黄・赤・オレンジ色のカラフルな建物が立ち並ぶルシヨンと違い、際立った個性がないからでしょう。
ボニューは、リュベロン地方の村の中でも知る人ぞ知る地味な村、というポジションに甘んじています。実は近隣で多くのトリュフを産するのですが、観光には結びついていないようです。
これまでは私のボニューに対する評価も似たようなものでした。アヴィニョン方面からルールマランに行く山ルートで通らざるを得ない村、という程度の位置づけ。マルシェが開催されているのを見て途中下車したことはありましたが、あえてボニューを目指し、ゆっくり村を散策してみようと思うほどの魅力は感じていませんでした。
古い鷹巣村にありがちなことですが、道が狭くバンを走らせるのにとても苦労します。そんな状況が、村の印象を悪くさせていたのかもしれません。
しかし、今回ゆっくり村を回ってみて、ルールマランに対する評価が180度変わりました。噛めば噛むほど味が出る素敵な村ですよ!
ボニューには少し変わったところがあります。村に大きな教会が二つもあるのです。高台の”église haute”と村の北側入口近くの” église neuve”。日本語に訳すと、「高い教会」と「新しい教会」です。”haute”はオート・クチュールのオート。そんなことはどうでもいいですかね。
「高い教会」は村の中でも一番の高台にあり、「新しい教会」は「高い教会」の何世紀か後に作られた教会。なんとも判りやすい名前ですね。こういうネーミング、好きです。
「高い教会」は12世紀に建立されました。この教会に行くためには86段もの階段を上らなければなりません。教区の老人たちがミサに通うのは大変だろう、ということで19世紀末に「新しい教会」が建てられたそうです。
ネーミング同様、背景も判りやすいですね。なぜこんな小さな村に教会が二つあるの?という以前からの疑問が解消され、すっきりしました。もう少し奥深い話を期待していなかったといえばウソになりますが、まあここまで判りやすいと逆に新鮮です。
それではまず「高い教会」を見てみましょう。村で一番高い場所にそびえ立つ左上の建物です。
壁に大きな時計が設置されている「高い教会」下の建物は旧村役場です。後ほど裏からお見せします。
「新しい教会」も見てみましょう。
「高い教会」と「新しい教会」、それほど時代の違いを感じませんね。「高い教会」は外壁を含め何度もリノベされており、12世紀建立という古さを感じないからでしょう。
「高い教会」の前庭まで上ってみました。背景を知らなかったので階段の数は数えておりません、残念。
はるか遠く、我がバンが見えるではないですか!写真の中央あたりです。スマホの方は見にくいかもしれません、ごめんなさい。
たしかにお年寄りの方が上ってくるには少しきついかもしれません。軽井沢のアップダウンが激しいエリアで毎日30分以上ウォーキングしている私でも楽々上ることができるという感じではなかったです。と、そう遠くない日にお年寄りに片足を突っ込む私の感想でした。
ここからは旧村役場も見えます、というか目の前です。
せっかくなので鐘をじっくり見てみましょう。大きいのと小さいの、二つ見えます。そういえばメネルブの旧役場にも鐘と時計がありました。昔は時刻を伝えるのも役場の仕事だったようです。教会とかぶらないのかな?
はるか遠くに見える集落はラコスト(Lacoste)です。
ラコストはあのサド侯爵が城を構えた村。現在お城は廃墟化が進んでおり、かなり迫力のある外観になっています。この村もいずれ必ずご紹介しますので、楽しみにお待ちください。
「高い教会」から「新しい教会」が見えました。
この写真の方が「新しい教会」の全体像を把握できますね。だったら最初からこっち使っとけよという感じです。
あてどもなく村の中を散策してみましょう。まず目を引かれたのがこの郵便配達員のストリートアート。
精緻な絵ですね。「ストリートアート」と言うには立派すぎるような?どう考えても脚立などでは届かない場所に描かれていますし。
ということで、調べてみました。この壁画の作者は”JR”という名前で活動している1983年生まれのフランス人カメラマン。壁画は、「ヌーヴェルヴァーグの祖母」と呼ばれ、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したこともあるベルギー人映画監督のアニエス・ヴァルダとの共同プロジェクト(ドキュメンタリー“Visages Villages”)で作成したものでした。
調べた資料に「”JR”が撮った写真を引き延ばしたものをヴァルダ監督が映像に収める」という説明がありましたので、手で描いたものではなさそうです。写真を何かに印刷し、貼り付けてあるのでしょう。あらためてじっくり見てみると、向かって左のヴォレ(雨戸)下に薄いものが剥がれたように見える箇所があります。
次に、ヴォルテール通り(rue voltaire)をぶらぶら。マルシェが開催される中心部から見晴らしの良いエリアまで上っていくのに便利な裏路地です。とにかく狭い!この幅だと走ることのできる車はⅡの方のミゼットくらいでしょう。フランスでは売っていないと思います。
昔々、この通りに多くのカフェが軒を連ねていたことがあり、当時はカフェ通り(rue du café)と呼ばれていたそうです。通りに繋がるパッサージュには中世のユダヤ人に関する哀しい歴史もあるのですが、あえて触れることは止めておきます。
ヴォルテール通りを歩いていると、由緒ありげな紋章のレリーフが目に入りました。
通りの歴史を調べてみたところ、17世紀頃、貴族Anselme家の邸宅にしつらえられた紋章でした。Anselme家はプロヴァンスの町Aptの市長や近隣のヴァナスク(Vanasque)コミューンの領主、プロヴァンス高等法院の弁護士などを輩出した超セレブ一族です。
引き続き村の中を散策。
お、猫発見!
こちらはシトロエン2CV。一度は運転してみたい大好きな車です。フランスらしいコンディションですね。。。まだ動くのかな?かなり変形してはいますが一応ナンバープレートが付いています。
村にはフォトジェニックなポイントが数多くありました。
村はずれで見つけた100%プロヴァンスな邸宅。ニワトリの風見鶏が良いアクセントになっています。景色も良さそうですし、こんな家で暮らしたらさぞかし楽しいことでしょう。
素晴らしい村でした。またいつか訪れて、今回探訪できなかったエリアもゆっくり歩いてみたいです。
それではまたお会いしましょう!
Raphaël